税理士が教える飲食店の経費割合と改善法

「売上は順調なのに、なぜか手元にお金が残らない…」そんな悩みを抱えていませんか?毎月の支払いに追われ、食材費や人件費の適正な割合がわからず、経営の先行きに不安を感じている飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。

実は、飲食店の利益を左右するのは売上だけでなく、経費の割合をいかに適切にコントロールできるかにかかっています。食材費は何%が適正なのか、人件費はどこまで抑えるべきなのか、家賃は売上の何%以内に収めるべきなのか。これらの数字を知らないまま経営を続けることは、暗闇の中を手探りで進むようなものです。

本記事では、飲食店における経費の理想的な割合と、その管理方法について詳しく解説します。これを読めば、自店の経費構造の問題点が明確になり、利益を確実に残せる体質へと改善する道筋が見えてくるはずです。経営の安定化に向けて、今すぐ実践できる具体的な方法をお伝えします。

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飲食店における経費割合の主な項目と目安

お店を切り盛りしていると、毎日のように発生する様々な支出に頭を悩ませることがあるのではないでしょうか。売上は好調なのに、なぜか手元に残るお金が思ったより少ない。そんな経験をお持ちの経営者の方も多いかもしれません。

実は、そこには店舗運営にかかるコストの内訳と、その適正な配分が深く関わっています。経費のバランスを理解し、適切に管理することこそ、安定した店舗運営を実現する第一歩となるのです。

変動費

毎月の売上に応じて増減する変動費は、店舗の稼働率と密接に関連しています。飲食業界において、変動費の中心となるのは食材原価と人件費で、この2つだけで売上の50〜60%を占めることが一般的です。

食材原価については、売上に対して25〜35%程度が適正とされています。ラーメン店なら30%前後、カフェなら25%程度、居酒屋では30〜35%といった具合に、業態によって多少の違いはありますが、この水準を大きく超えると利益確保が困難になってきます。特に最近は仕入れ価格の高騰が続いているため、メニュー構成の工夫や仕入れ先の見直しなど、様々な角度からアプローチすることが求められています。

人件費についても、売上に占める適正な比率は20〜30%とされています。正社員の給与だけでなく、アルバイトやパートの時給、社会保険料、交通費なども含めた総額で考える必要があります。繁忙時間帯と閑散時間帯のメリハリをつけた人員配置や、マルチタスクができるスタッフの育成など、効率的な運用が求められるところです。

水道光熱費も無視できない変動費のひとつで、売上の5〜7%程度が目安となります。調理方法の工夫や省エネ機器の導入、こまめな節電・節水など、日々の積み重ねが大きな差を生み出します。特に電気代やガス代の基本料金プランの見直しは、意外と見落としがちなポイントかもしれません。

固定費

売上の増減にかかわらず毎月一定額が発生する固定費は、経営の安定性を左右する重要な要素です。中でも店舗家賃は固定費の大部分を占め、理想的には売上の10%以内に抑えることが健全経営の目安とされています。

立地条件は集客に直結するため、安易に家賃の安い物件を選ぶわけにはいきませんが、売上規模に見合わない高額な家賃は経営を圧迫します。物件選びの段階から、想定売上と家賃のバランスを慎重に検討することが大切です。既に営業中の店舗であれば、契約更新のタイミングで家主との交渉を試みることも一つの方法でしょう。

リース料や減価償却費といった設備関連の固定費も、無視できない項目です。厨房機器や空調設備、POSレジなどの導入時には、購入とリースのどちらが有利か、長期的な視点で判断する必要があります。初期投資を抑えたい場合はリースが有効ですが、トータルコストでは購入の方が安くなるケースも少なくありません。

通信費や保険料、飲食店税理士への顧問料なども固定費に含まれます。これらは個別には小さな金額かもしれませんが、積み重なると無視できない規模になります。定期的に契約内容を見直し、本当に必要なサービスかどうか、適正な価格設定かどうかを確認することが重要です。

その他の経費として、広告宣伝費や消耗品費、修繕費なども考慮する必要があります。これらは売上の10〜15%程度に収めることが理想的です。特に開業当初は認知度向上のために広告宣伝費がかさみがちですが、費用対効果を常に検証しながら、効率的な集客方法を模索していくことが求められます。

飲食店の経費割合における理想と設定方法

経費の内訳を把握したら、次はそれらをどのような比率で管理していくべきか、その理想的な姿を描く段階に入ります。単に数字を追うだけでなく、自店の特性や戦略に合わせた目標設定が、持続可能な経営の実現につながるのです。

全体に占める経費割合の目安

中小規模の飲食業界では、売上高に対する経費の割合を85〜90%未満に抑えることが、安定経営の一つの目安となっています。つまり、売上の10〜15%を営業利益として確保することが理想的な状態といえるでしょう。

ただし、この数字はあくまで平均的な指標であり、店舗の規模や業態によって大きく異なることを理解しておく必要があります。個人経営の小規模店舗では、オーナー自身が調理や接客を担当することで人件費を抑制できるため、経費率を80%程度まで下げることも可能です。一方、複数店舗を展開するチェーン店では、本部機能の維持費用なども加わるため、経費率が90%近くになることもあります。

月商500万円の居酒屋を例に考えてみましょう。食材原価が150万円(30%)、人件費が125万円(25%)、家賃が50万円(10%)、水道光熱費が35万円(7%)、その他の経費が65万円(13%)とすると、経費合計は425万円で経費率85%となります。この場合、75万円の営業利益が残る計算になりますが、ここから借入金の返済や設備投資のための積立も行わなければなりません。

業態別にみると、ラーメン店やファストフード店のように回転率を重視する業態では、薄利多売の戦略を取るため経費率が高くなる傾向があります。逆に、高級レストランやバーのように客単価の高い業態では、原価率は高くても販売価格に転嫁できるため、結果的に経費率を抑えやすくなります。

季節変動も考慮する必要があります。忘年会シーズンのように繁忙期には売上が増加し、固定費の比率が相対的に下がるため経費率は改善します。しかし閑散期には売上が減少しても固定費は変わらないため、経費率が悪化することを想定した資金計画が必要になってきます。

FL比率(原価+人件費)の理想水準

店舗経営において最も重要な指標の一つが、Food(食材費)とLabor(人件費)を合わせたFL比率です。この二つの変動費を合計したFL比率を60%以下に抑えることが、健全な店舗運営の基本とされています。

理想的な内訳としては、食材費35%、人件費25%の合計60%というバランスが推奨されています。優良店舗では、食材費33%、人件費22%でFL比率55%以下を実現しているケースもあります。この5%の差は小さく見えるかもしれませんが、月商500万円の店舗なら月25万円、年間300万円もの利益差を生み出します。

ただし、業態によってF(食材費)とL(人件費)のバランスは異なります。高級料理店では、質の高い食材を使用するため食材費率が40%を超えることもありますが、その分、セルフサービスの要素を取り入れるなどして人件費を20%程度に抑えることでバランスを取っています。逆にカフェやバーなどドリンク中心の業態では、原価率が低い分、接客サービスに力を入れるため人件費率が高くなる傾向があります。

FL比率が65%を超えると黄色信号、70%を超えると赤字経営に陥る危険性が高まります。なぜなら、家賃や水道光熱費、その他の経費で30%以上かかることが一般的だからです。FL比率70%にその他経費30%を加えると100%となり、利益が全く残らない状態になってしまいます。

FL比率を改善するためには、まず現状を正確に把握することから始めます。毎日の売上、仕入れ額、人件費を記録し、週次や月次でFL比率を算出する習慣をつけることが大切です。食材費が高い場合は、メニューの見直しや仕入れ先の開拓、ロス削減などの対策を検討します。人件費が高い場合は、シフトの最適化や業務効率の改善、場合によってはセルフサービスの導入なども視野に入れる必要があるでしょう。

飲食店の経費割合を管理・改善するポイント

理想的な経費構造を理解したところで、実際にそれを実現し、維持していくための具体的な方法について考えていきましょう。日々の営業に追われる中でも、継続的に実践できる管理手法と改善策を身につけることが、経営の安定化への近道となります。

割合のモニタリング方法

経費管理の第一歩は、毎日の売上と支出を正確に記録し、定期的にFL比率やその他の経費率を算出して、目標値との乖離を把握することです。この地道な作業の積み重ねが、問題の早期発見と迅速な対応を可能にします。

まず日次管理として、レジ締めと同時に売上高、食材仕入れ額、人件費(シフト実績)を記録します。最近はPOSレジと連動した売上管理システムを導入する店舗も増えており、リアルタイムでデータを把握できるようになっています。手書きの場合でも、専用のノートやエクセルシートを用意し、毎日同じ時間に記録する習慣をつけることが重要です。

週次では、1週間分のデータを集計し、FL比率を算出します。目標値と比較して、乖離が大きい場合はすぐに原因を分析し、翌週のシフト調整やメニュー構成の見直しなど、迅速な対応を心がけます。特に天候や近隣イベントなどの外部要因による売上変動があった場合は、その影響を記録しておくことで、翌年の計画立案に活かすことができます。

月次管理では、より詳細な分析を行います。総勘定元帳などの会計データを活用し、全ての経費項目について売上に対する比率を算出します。前月比、前年同月比での比較も行い、トレンドを把握することが大切です。また、原価率の高いメニューと低いメニューの売上構成比を分析することで、利益率改善のヒントが見つかることもあります。

クラウド型の会計ソフトを活用すれば、銀行口座やクレジットカードの取引データを自動で取り込み、リアルタイムで経営状況を把握できるようになります。初期設定には多少の手間がかかりますが、一度システムを構築してしまえば、経理作業の大幅な効率化と、タイムリーな経営判断が可能になります。

さらに、競合他店の動向も定期的にチェックすることをお勧めします。同じ商圏内の類似業態の店舗を訪問し、価格設定やサービス内容を調査することで、自店の立ち位置を客観的に評価できます。業界誌や統計データも参考にしながら、自店の経費構造が業界標準と比べてどうなのか、定期的に検証することも必要でしょう。

コスト削減の実践策

経費の現状把握ができたら、次は具体的な削減策の実行です。ただし重要なのは、サービスの質を落とさずに、むしろ業務効率を高めながらコストを削減することです。お客様の満足度を維持・向上させながら、無駄を省いていく視点が欠かせません。

食材費の削減では、まず仕入れ先の見直しから始めます。複数の業者から相見積もりを取り、価格交渉を行うのは基本中の基本です。また、地元の農家や漁師から直接仕入れることで、中間マージンを省きながら新鮮な食材を確保できることもあります。さらに、仕入れのタイミングを工夫し、市場の相場が下がる時期に大量購入して冷凍保存するなど、計画的な仕入れも効果的です。

食材ロスの削減も重要なポイントです。先入先出法を徹底し、在庫管理を適切に行うことで、廃棄ロスを最小限に抑えられます。また、端材を活用した新メニューの開発や、賄いでの消費など、食材を無駄なく使い切る工夫も必要です。オーバーポーションを防ぐため、計量器を使った盛り付けの標準化も効果的な対策のひとつです。

人件費については、シフトの最適化が鍵となります。過去の売上データを分析し、曜日や時間帯ごとの適正人員を把握することで、無駄な人件費を削減できます。また、マニュアルの整備や動線の改善により、少ない人数でも効率的にオペレーションできる体制を構築することも重要です。セルフオーダーシステムの導入や、配膳ロボットの活用など、テクノロジーを活用した省人化も選択肢のひとつでしょう。

水道光熱費の削減では、省エネ機器への更新が長期的には大きな効果をもたらします。LED照明への切り替えや、省エネタイプの冷蔵庫・エアコンの導入は、初期投資は必要ですが、数年で回収できることが多いです。また、調理方法の工夫により、ガスや電気の使用量を減らすことも可能です。例えば、下ごしらえをまとめて行う、余熱を活用する、適切な火力調整を心がけるなど、日々の小さな積み重ねが大きな削減につながります。

固定費の見直しも定期的に行う必要があります。保険の補償内容が過剰になっていないか、通信プランが最適か、リース契約の条件は妥当かなど、年に一度は全ての固定費項目を見直すことをお勧めします。特に長期契約については、更新のタイミングで再交渉を行うことで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。

飲食店における経費割合の基本

ここまで見てきたように、店舗の経費管理は単なる数字の把握だけでなく、業界全体の動向や指標を理解した上で、自店に最適な運営方法を見つけることが重要になってきます。では、より専門的な指標についても理解を深めていきましょう。

業界指標:FL比率・原価率・FLR比率

飲食業界では、FL比率に家賃(Rent)を加えたFLR比率という指標も重要視されており、この3大コストの合計を売上の70%以内に抑えることが、安定経営の目安とされています。

FLR比率の理想的な内訳は、食材費35%、人件費25%、家賃10%の合計70%です。残りの30%で、水道光熱費、減価償却費、消耗品費、販促費などのその他経費を賄い、さらに利益を確保する必要があります。この構造を理解することで、新規出店時の物件選定や、既存店舗の収益性評価がより的確に行えるようになります。

例えば、好立地だが家賃が売上想定の15%になる物件があったとします。この場合、FL比率を55%以内に抑えなければFLR比率70%を達成できません。これは相当厳しい条件であり、よほど効率的な運営ができる自信がなければ、避けた方が賢明でしょう。逆に、立地は劣るが家賃が7%で済む物件なら、FL比率に3%の余裕が生まれ、より質の高い食材を使用したり、手厚い接客サービスを提供したりする余地が生まれます。

原価率についても、単純に低ければ良いというものではありません。業態やコンセプトに応じた適正値があり、それを大きく逸脱すると、お客様の期待を裏切ることになりかねません。高級フレンチレストランで原価率20%では、満足いただける料理を提供することは困難でしょう。一方、立ち飲み居酒屋で原価率40%では、低価格での提供が難しくなります。

また、ドリンクの原価率は一般的に20〜25%と低いため、フードとドリンクの売上構成比も重要な要素となります。居酒屋やバーのようにドリンク比率が高い業態では、全体の原価率を抑えやすく、利益を確保しやすい構造になっています。逆に、ランチ営業中心でドリンク比率が低い業態では、フードの原価管理がより重要になってきます。

統計データと業界目安(%水準)

実際の統計データを見ると、飲食業界全体のFL比率の平均は55〜60%で推移しており、優良企業では50〜55%、経営が厳しい企業では65%を超えているケースが多く見られます。

日本政策金融公庫の調査によると、黒字企業と赤字企業では、FL比率に約10%の差があることが明らかになっています。黒字企業の平均FL比率が約56%なのに対し、赤字企業では66%を超えています。この10%の差は、月商500万円の店舗では月50万円、年間600万円もの差となって現れます。

業態別の標準的な数値を見てみると、ファミリーレストランではFL比率55〜60%、居酒屋では60〜65%、カフェでは50〜55%、ラーメン店では55〜60%となっています。これらの数値は、各業態の特性を反映しています。居酒屋は深夜営業による人件費増や、鮮度を重視した仕入れによる原価上昇があるため、FL比率が高めになる傾向があります。

最近の傾向として、人手不足による人件費の上昇と、原材料価格の高騰により、FL比率は上昇傾向にあります。特に都市部では、最低賃金の上昇や人材獲得競争の激化により、人件費率が30%を超える店舗も珍しくなくなってきました。このような環境下では、従来の経営手法だけでは限界があり、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化や、新しいビジネスモデルの構築が求められています。

中小企業基盤整備機構の支援マニュアルによると、開業3年以内に廃業する飲食店の多くが、FL比率の管理不足を原因として挙げています。特に開業初年度は、想定以上に食材ロスが発生したり、オペレーションが安定せず人件費が嵩んだりすることが多いため、FL比率が70%を超えてしまうケースも少なくありません。

こうした現実を踏まえると、開業前の事業計画段階から、保守的にFL比率を見積もり、余裕を持った資金計画を立てることの重要性が理解できます。また、開業後も継続的にデータを収集・分析し、PDCAサイクルを回しながら、徐々に理想的な数値に近づけていく努力が必要です。

経費管理は一朝一夕には改善できません。しかし、適切な指標を理解し、継続的にモニタリングすることで、必ず改善の道筋は見えてきます。大切なのは、お客様に喜んでいただける商品・サービスを提供しながら、同時に健全な収益構造を維持することです。この両立こそが、持続可能な店舗経営の基盤となるのです。

そして、こうした経営改善の取り組みを続けていく中で、専門家のアドバイスが必要になることもあるでしょう。特に財務面での課題が複雑化してきた場合、経験豊富な専門家の視点から、新たな改善策が見つかることも多いものです。定期的に経営状況を客観的に評価してもらうことで、自店の強みと課題がより明確になり、次のステップへの道筋が見えてくることでしょう。

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飲食店の経費割合のまとめ

飲食店の経費割合のまとめとして、ここまで見てきたポイントを整理しておきましょう。飲食店を安定的に経営していくためには、売上に対する経費の割合を85〜90%未満におさえることが基本となります。なかでも重要なのがFL比率で、食材費と人件費をあわせて60%以下にコントロールすることが健全経営のカギをにぎっています。

さらに家賃をくわえたFLR比率では70%以内をめざすことで、のこりの30%から水道光熱費などのその他経費をまかない、利益を確保できる構造になります。こうした経費割合の適正化は、継続的なモニタリングと改善のくりかえしによってはじめて実現できるものです。

日々の売上と支出を記録し、定期的に各種比率をチェックすることで、問題の早期発見と対応が可能になります。また、業態や規模によって理想的な割合はことなるため、自店の特性をふまえた目標設定が大切です。飲食店経営において、数値管理は避けてとおれない課題ですが、適切な指標を理解し実践することで、かならず改善への道筋は見えてきます。専門的な助言が必要なときは、飲食店に詳しい税理士などの専門家に相談することも、経営改善の有効な選択肢となるでしょう。

経費項目 理想的な割合 ポイント
食材費(F) 25〜35% 業態により変動、ロス削減が重要
人件費(L) 20〜30% シフト最適化で効率化
FL比率 60%以下 55%以下なら優良店
家賃(R) 10%以内 立地と売上のバランスが重要
FLR比率 70%以内 3大コストの管理指標
水道光熱費 5〜7% 省エネ対策で削減可能
営業利益 10〜15% 安定経営の目安
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