飲食店の原価率と理想値を税理士が解説

食材費が売上の40%を超えてしまい、利益が出ない。そんな悩みを抱えていませんか?多くの飲食店経営者が、日々の忙しさに追われて原価管理まで手が回らず、気づいたときには赤字になっているケースが少なくありません。

飲食店の原価率を理想的な水準に保つことは、安定した利益を生み出すための最も確実な方法です。しかし、ただ食材費を削れば良いわけではありません。お客様の満足度を維持しながら、適正な原価率を実現するには、税理士の視点から見た経営全体のバランスが重要になります。

本記事では、業態別の理想的な原価率から、具体的な改善方法、最新の業界動向まで、実践的なノウハウをお伝えします。これを読めば、明日から実行できる原価管理の具体策が見つかり、利益体質の強い店舗運営が実現できるでしょう。

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飲食店における理想の原価率を税理士の視点で考える

全体的な目安

お店の利益をきちんと残していくためには、売上に占める食材費の割合をどのように設定するかが重要になります。経営の専門家や飲食店税理士が飲食業を支援する中で見えてきた数値があります。一般的に飲食業界では、売上に対する食材費の比率を30パーセント程度に収めることが健全な経営の基準とされています

ただし、この数値は絶対的なものではありません。実際のところ、2024年から2025年にかけて、円安や原材料費の高騰により、多くの店舗がこの水準を維持するのに苦労しているのが現実です。最新の調査データによると、実際の食材費比率は36パーセント前後まで上昇している店舗が増えています。

重要なのは、食材費だけを単独で考えるのではなく、人件費と合わせたFLコストという観点で経営を見ることです。食材費が30パーセント、人件費が30パーセント、合計で60パーセント以内に収めることで、家賃や光熱費、そして利益を確保できる構造になります。

業態別の理想値(レストラン・居酒屋・カフェ・ラーメン・テイクアウトなど)

業態によって適正な食材費の比率は大きく異なります。それぞれの営業スタイルやお客様への価値提供の仕方が違うため、画一的な基準を当てはめることはできません。

高級レストランやフレンチ、寿司店などでは、食材費比率が35パーセントから40パーセントになることも珍しくありません。こうした業態では高品質な食材を使用することがお客様への価値提供の中心となるため、食材費が高くなるのは自然なことです。その代わり、単価を高く設定することで利益を確保しています。

居酒屋やダイニングバーでは25パーセントから30パーセント程度が目安となります。アルコールの提供比率が高く、ドリンクの利益率がよいため、全体の収益構造が改善されやすいのが特徴です。

カフェや喫茶店は20パーセントから25パーセントと比較的低い水準で運営できます。ドリンクメニューが中心で、フードの比率が15パーセント、ドリンクが85パーセント程度という構成になることが多く、コーヒーなどのドリンクは材料費に対して高い付加価値をつけやすいためです。

ラーメン店は業態の中でも特徴的で、チェーン店では20パーセント前後、個人店では30パーセント前後という幅があります。スープの種類によっても大きく変わり、味噌、とんこつ、醤油の順で材料費が変動する傾向にあります。回転率が高く、人件費を抑えやすい業態であることも、経営効率の良さにつながっています。

テイクアウト専門店は、店内飲食がない分、人件費や店舗運営コストを抑えられるため、食材費比率を若干高めに設定しても利益を確保できる構造になっています。

飲食店の原価率と理想的な数値を税理士がわかりやすく解説

原価率とは何か(定義・計算式)

飲食業を営む方にとって、売上と利益の関係を正しく理解することは経営の基本中の基本です。売上高のうち、料理やドリンクを作るために必要な材料費が占める割合のことを、専門用語で原価率と呼びます

計算方法はとてもシンプルです。材料費を売上高で割って100をかけるだけです。たとえば、1000円のパスタを提供するために300円分の食材を使った場合、300円÷1000円×100で30パーセントという計算になります。10食売れた場合でも、3000円÷10000円×100で同じく30パーセントとなります。

経営支援の現場でよく見かけるのが、この基本的な計算を日々行っていない店舗です。月末になって初めて数値を確認し、予想以上に材料費がかかっていたことに気づくケースが少なくありません。日々の営業の中で、各メニューがどれだけの利益を生み出しているのかを把握することが、安定した経営の第一歩となります。

原価率が経営に与える影響(利益・費用構造)

食材費の比率が1パーセント変わるだけで、年間の利益は大きく変動します。月商300万円の店舗で考えると、材料費比率が30パーセントから31パーセントに上がれば、月3万円、年間36万円の利益が減少することになります。小さな数字に見えるかもしれませんが、中小規模の店舗にとっては決して無視できない金額です。

経営全体の費用構造を見ると、売上から材料費、人件費、家賃、光熱費、その他経費を引いた残りが利益となります。一般的な構成比では、材料費30パーセント、人件費30パーセント、家賃10パーセント、光熱費8パーセント、その他経費12パーセント、利益10パーセントという配分が理想とされています。

しかし現実には、この理想的な配分を実現できている店舗は多くありません。特に最近の物価高騰により、食材費と光熱費の比率が上昇し、利益を圧迫している状況が続いています。こうした外部環境の変化に対応するためには、単に材料費を削るのではなく、経営全体を見直す必要があります。

材料費が高くなりすぎると利益が出にくくなりますが、逆に低くしすぎると品質低下を招き、お客様の満足度が下がってしまいます。経営者は常にこのバランスを意識しながら、適正な水準を維持する努力が求められます。

飲食店の原価率を理想値に近づける改善・最適化の方法を税理士が提案

ロス削減と在庫管理の徹底

食材の無駄をなくすことは、利益改善の最も確実な方法のひとつです。仕入れた食材のうち、実際にお客様に提供できずに廃棄される部分があれば、その分だけ実質的な材料費比率が上昇してしまいます。

たとえば、1キログラム1万円の食材を仕入れて、100グラムを廃棄した場合、実質的には900グラムで1万円かかったことになり、グラム単価が上昇します。経営改善の現場で確認すると、材料費比率が高い店舗ほど、冷蔵庫や冷凍庫の管理が乱雑で、食材の廃棄が多い傾向があります

在庫管理を適切に行うためには、まず棚卸しを定期的に実施することが大切です。どの食材がどれだけあるのか、消費期限はいつなのか、これらを把握することで、発注の精度が向上し、廃棄ロスを減らすことができます。最新のPOSシステムを活用すれば、売上データと連動した在庫管理も可能になり、より効率的な運営ができるようになります。

先入れ先出しの徹底も重要です。新しく仕入れた食材を奥に、古いものを手前に配置することで、期限切れによる廃棄を防ぐことができます。こうした基本的なルールを、アルバイトスタッフまで含めて全員で共有し、実践することが必要です。

レシピの標準化と調理プロセスの統一

料理の味を安定させることは、お客様満足度の向上につながるだけでなく、材料費の管理にも大きく貢献します。レシピを明文化し、各メニューの材料使用量を正確に決めることで、オーバーポーションを防ぎ、適正な材料費比率を維持できます

オーバーポーションとは、決められた分量より多く盛り付けてしまうことです。一見すると些細なことのように思えますが、毎日の積み重ねで大きな差となって現れます。レシピには、グラム単位で正確な分量を記載し、計量器を使って調理することを習慣化することが大切です。

調理プロセスの統一は、品質の安定だけでなく、作業効率の向上にもつながります。誰が作っても同じ味、同じ見た目になるようにマニュアル化することで、新人スタッフの教育時間も短縮でき、人件費の削減にも貢献します。

食材の共通化も有効な手法です。複数のメニューで同じ食材を使うことで、仕入れロットを大きくし、単価を下げることができます。また、在庫管理もシンプルになり、廃棄リスクも減少させることができます。

メニュー構成の見直しと価格戦略

すべてのメニューを同じ材料費比率にする必要はありません。むしろ、メニュー全体でバランスを取ることが重要です。看板メニューは多少材料費比率が高くても、集客効果があれば問題ありません。その分、利益率の高いドリンクやサイドメニューで全体の収益性を確保する戦略が有効です。

メニューごとの売上構成比と材料費比率を分析することで、どの商品が利益に貢献しているかが明確になります。売れ筋メニューの材料費比率が高すぎる場合は、価格改定や内容の見直しを検討する必要があります。逆に、利益率は高いけれど売れていないメニューがあれば、積極的に販売促進を行うことで、全体の収益性を改善できます。

価格改定は慎重に行う必要がありますが、原材料費の高騰が続く現在、避けて通れない課題となっています。調査によると、2023年から2024年にかけて、約68パーセントの店舗が何らかの形で価格改定を実施しています。値上げの際は、単純に価格を上げるのではなく、付加価値を高める工夫も同時に行うことで、お客様の理解を得やすくなります。

仕入れ方法・業者交渉の工夫

仕入れコストの削減は、材料費比率を改善する直接的な方法です。複数の仕入れ先を比較検討し、品質を維持しながらコストを下げる努力が必要です。大量仕入れによる単価交渉や、生産者との直接取引なども検討する価値があります。

仕入れ先との関係構築も重要な要素です。長期的な取引関係を築くことで、価格交渉がしやすくなり、安定した品質の食材を確保できるようになります。また、季節による価格変動が大きい食材については、複数の仕入れ先を確保しておくことで、リスクを分散させることができます。

最近では、価格変動の激しい生鮮食材から、価格が安定している冷凍食材への切り替えを行う店舗も増えています。冷凍技術の向上により、品質を大きく損なうことなく、コストと在庫管理の両面でメリットを得ることができるようになってきています。

仕入れのタイミングや発注量の最適化も重要です。売上予測の精度を高め、必要最小限の在庫で運営することで、廃棄ロスを減らし、資金繰りも改善することができます

飲食店の原価率に影響する要素と理想に近づける方法を税理士が解説

食材ロス・歩留まり

仕入れた食材をすべて料理に使えるわけではありません。野菜の皮や根、肉の筋、魚の骨など、どうしても使えない部分が存在します。この実際に使用できる部分の割合を歩留まりといい、正確な材料費計算には欠かせない要素となります。

たとえば、魚を一匹丸ごと仕入れた場合、実際に刺身として提供できる部分は全体の40パーセント程度になることもあります。この歩留まりを考慮せずに価格設定を行うと、実際の材料費比率が想定を大きく上回ってしまうことになります

歩留まりを改善するためには、食材の下処理技術を向上させることが重要です。野菜の皮むきを薄くする、魚をさばく技術を向上させるなど、日々の積み重ねが大きな差となって現れます。また、従来は廃棄していた部分を活用した新メニューの開発も、有効な対策のひとつです。

食材の保存方法も歩留まりに大きく影響します。適切な温度管理と保存方法により、食材の劣化を防ぎ、使用可能な期間を延ばすことができます。真空パックや急速冷凍などの技術を活用することで、品質を維持しながら廃棄ロスを削減することが可能になります。

仕入れコスト・仕入れ先選び

食材の仕入れ価格は、店舗の立地、規模、取引量などによって大きく異なります。個人店が大手チェーン店と同じ価格で仕入れることは難しいですが、工夫次第で仕入れコストを削減することは可能です。

地元の生産者と直接取引することで、中間マージンを省き、新鮮な食材を適正価格で仕入れることができます。また、地産地消をアピールすることで、店舗の付加価値向上にもつながります。仕入れ先を一社に依存するのではなく、複数の取引先を持つことで、価格交渉力を高め、安定供給を確保することができます。

業務用食材の共同仕入れも検討する価値があります。近隣の飲食店と協力して大量仕入れを行うことで、個店では難しい価格交渉が可能になります。最近では、飲食店向けの仕入れプラットフォームも充実してきており、小規模店舗でも競争力のある価格で仕入れができる環境が整ってきています

仕入れ先の選定では、価格だけでなく、品質の安定性、納品の確実性、支払い条件なども総合的に判断することが重要です。安いからといって品質の悪い食材を使えば、お客様の満足度が下がり、結果的に売上減少につながる可能性があります。

メニュー設計・価格設定

メニュー設計は、店舗の収益性を左右する重要な要素です。すべてのメニューで利益を出そうとするのではなく、集客商品と収益商品を明確に分けて設計することが効果的です。

集客商品は、多少材料費比率が高くても、お客様を呼び込む力があれば価値があります。一方、収益商品は材料費比率を低く抑え、利益を確保する役割を担います。ドリンクメニューやデザートは、一般的に材料費比率が低く、収益商品として位置づけられることが多いです。

価格設定では、競合店の価格調査も重要ですが、自店の価値提供を明確にすることがより大切です。単純な価格競争に陥るのではなく、独自の価値を提供することで、適正な価格設定が可能になります

セットメニューの活用も有効な戦略です。単品では材料費比率が高いメインディッシュに、比率の低いドリンクやサイドメニューを組み合わせることで、全体の収益性を向上させることができます。お客様にとっても、セット価格でお得感を感じることができ、満足度向上にもつながります。

飲食店の原価率と理想をめぐる最新の業界データを税理士が読み解く

平均値や最新トレンド

2025年の飲食業界は、これまでにない厳しい環境に直面しています。最新の調査データによると、飲食店の平均的な材料費比率は36パーセント前後まで上昇しており、従来の30パーセント基準を大きく上回る状況が続いています。

この上昇の背景には、複数の要因が重なっています。約95パーセントの飲食店が仕入れ価格の上昇を実感しており、特に肉類、乳製品、小麦粉などの基幹食材の値上がりが経営を圧迫しています

興味深いのは、この状況下でも黒字を維持している店舗の特徴です。成功している店舗は、単に材料費を削るのではなく、メニュー構成の見直し、業務効率化、デジタル化などを組み合わせた総合的な対策を実施しています。特に、ITツールを活用した在庫管理や売上分析により、無駄を削減し、利益率を改善している事例が増えています。

業態別の傾向を見ると、居酒屋やバーなどアルコール比率の高い業態は比較的影響が少なく、逆にラーメン店や定食屋など、食材依存度の高い業態ほど苦戦している状況が見て取れます。

食材価格高騰・輸入コストの影響

円安の進行と世界的な農産物価格の上昇により、輸入食材のコストは大幅に上昇しています。特に、輸入ワイン、チーズ、オリーブオイルなど、洋食店にとって欠かせない食材の価格上昇が顕著です。

国産食材も例外ではありません。飼料価格の高騰により、肉類や卵の価格が上昇し、エネルギーコストの増加により、野菜の生産コストも上がっています。2024年から2025年にかけて、食材価格は平均で15パーセントから20パーセント上昇しており、この傾向は当面続くと予想されています

こうした状況に対応するため、多くの店舗が価格改定に踏み切っています。しかし、単純な値上げだけでは顧客離れを招く恐れがあるため、付加価値の向上や、メニューの見直しなど、総合的な対策が求められています。

一方で、この危機をチャンスと捉える動きも出てきています。地元食材の活用による輸送コスト削減、季節メニューの充実による仕入れコストの最適化など、創意工夫により収益性を改善している店舗も少なくありません。経営環境が厳しい今こそ、基本に立ち返り、一つひとつの無駄を見直すことで、より強い経営体質を作ることができる機会でもあるのです。

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飲食店の原価率と理想的な経営を税理士が解説するまとめ

飲食店を経営するうえで、売上に占める食材費の割合をどのように管理するかは、利益を左右する最も重要な要素のひとつです。一般的には30パーセント程度が理想とされていますが、業態によって適正な数値は異なり、高級レストランでは40パーセント、カフェでは25パーセント程度と幅があります。

税理士の視点から見ると、原価率は単独で考えるのではなく、人件費と合わせたFLコストとして60パーセント以内に収めることが、健全な経営の目安となります。現在の飲食業界は、円安や原材料費の高騰により厳しい状況にありますが、在庫管理の徹底、レシピの標準化、メニュー構成の見直し、仕入れ方法の工夫など、さまざまな改善策を組み合わせることで対応可能です。

成功している店舗は、食材の無駄をなくし、適切な価格設定を行い、ITツールを活用して効率的な運営を実現しています。経営環境が厳しい今こそ、基本に立ち返り、ひとつひとつの改善を積み重ねることで、より強い経営体質を作ることができるのです。

業態 理想的な原価率 特徴
高級レストラン・寿司店 35~40% 高品質食材で付加価値提供
居酒屋・ダイニングバー 25~30% ドリンク比率が高く利益確保しやすい
カフェ・喫茶店 20~25% ドリンク中心で原価率を抑えやすい
ラーメン店 20~30% 回転率が高く人件費を抑制可能
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